「幸福と不幸という名の井戸」 人の心の中庭には、 幸福と言う名の井戸と不幸という名の井戸がある。 二つの井戸はその源は同じだけれど、 二つの井戸は正反対の性質を持つ。 幸福という名の井戸の水は、 美味しいのだけれど、 汲んでしまうとすぐに空になってしまう。 一方、不幸という名の井戸の水は、 不味いばかりではなく、 いくら汲んでも空になる事はない。 しかも、不幸という名の井戸の水を汲まないで置くと、 その内溢れ出してしまって溺れてしまうばかりか、 幸福という名の井戸までも不味い水にしてしまう。 だから人は、不幸という名の井戸の水で溺れないように、 汗水たらして不幸という名の井戸の水を汲み上げて、 幸福の言う名の井戸の水で、 乾いた喉を潤している。 藤次郎正秀